起業家向け社会保険講座

第1回 税金と社会保険、どっちの対策が重要?

●税金と社会保険は、どちらもビジネスと生活に深くかかわってき
ますが、どちらがより影響が大きいのでしょうか?

●費用の負担でいいますと、例えば年収500万円で、奥さんと子供2
人の40歳以上のサラリーマンの場合、税金は所得税と住民税で20万
円弱になりますが、社会保険は60万円以上も払っています。

●このように、負担の大きさでは、よほどの高収入の方でない限り、
社会保険のほうが重くなっています。

●税金対策の目的は、いかに税金を減らすか、あわよくばゼロにし
たいというように、とてもはっきりしています。

●社会保険も、できるだけ保険料を減らしたいと思うのは当然です
が、保険料を減らすと老後にもらえる年金が減ったり、保険料を払
わなければ病気などイザというときに保障がなかったりして、生活
に大きな悪影響がでてしまいます。

●ですので、単純に保険料を減らせばいいという問題でもなく、保
険料の負担と、保険から得られるリターン(年金額や保障など)と
のバランスを考えなければなりません。

●日本の税制は収入に応じて税率も上がる累進課税ですから、起業
しても収入も少ないうちは、節税策をあれこれ考えるより、社会保
険をどうするか、しっかり対策を立てるほうが重要です。

●独立開業すると、社会保険は、保険料もすべて自分が負担するよ
うになりますし、加入する社会保険が変わったり、サラリーマン時
代と大きく変わってきます。

●独立開業をめざす方は、サラリーマンのように収入の保障もあり
ませんし、自分が動けなくなったら休業手当もありません。

●社会保険についてしっかり対策を立てて、生活基盤をしっかり固
めてから、ビジネスにチャレンジすることが重要です。夢だけを追
いかけて家族を路頭に迷わせてはいけません。

●税金対策に頭を悩ますのは、ビジネスが成功して高収入になって
からでも間に合います。

●ということで、次回以降、しばらくは、独立開業すると社会保険
はサラリーマン時代とどう変わるかについてご説明して行きたいと
思います。

第2回 独立すると社会保険はどう変わる?

●サラリーマンは、社会保険料(ここでは労働保険も含めて説明し
ます)として、基本的に厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料
の3つ(40歳以上の場合は介護保険も加わり4つ)が給料から天引き
されています。

●それぞれの主な内容を一言でいうと、次のとおりです。
・厚生年金保険:老後の生活費を、年金の形で将来もらうことが出
 来る。
・健康保険:病気などで医者にかかった場合、総費用の3割の自己負
 担で済む。
・雇用保険:失業したとき、一定期間生活費がもらえる。
・介護保険(40歳以上の場合):老後、介護が必要になったとき、
 総費用の1割の自己負担で済む。

●それぞれの保険には、これ以外にもいろいろな給付など見返りも
ありますし、例外もありますが、一番の基本はこんなところです。

●この他に、会社が保険料を全額負担している労災保険にも加入し
ています。

●では、脱サラして独立開業すると何がどう変わるのでしょうか?
一番大きいのは、例えば法人として独立した場合、負担が基本的に
今の2倍になるということでしょう。

●厚生年金であれ、健康保険であれ、サラリーマンの場合、原則と
して会社が保険料の半分を負担しています。

●たとえば、厚生年金の保険料率は、2007年2月現在14.642%で
すが、サラリーマンと会社が7.321%ずつ負担しあっています。

●これが、独立開業するとすべてあなた自身が負担することになり
ます。独立開業すると負担が今の2倍になってしまうのは大変だ!
と思われるかもしれません。

●でも厚生年金などの社会保険料を、「会社が半分負担してくれて
いる」というのは錯覚に過ぎません。会社は決してボランティアで
あなたの社会保険料を負担しているわけではないのです。

●会社は、従業員の給料を算定するとき、もろもろの社会保険料込
みで、人件費を計算します。えば従業員の月給50万円とすると、会
社は社会保険料込みで人件費として約56万円で計算します。

●逆に言えば、会社として、損益分岐点を分析して人件費が50万円
までしか出せないと判断したら、社会保険料が5万円かかると計算し、
ゆくゆくはその従業員の給料は45万円程度になってしまうのです。

●これは言い方を変えると、「従業員が自分で支払う社会保険料の
うち、半分を会社名義で支払っているだけ」ということもできます。

●「半分が会社負担」というのは、サラリーマンの負担感を低く見
せるためと、会社に徴収業務を代行させるための、政策的な仕掛
けと思ったほうがよいでしょう。

●独立・開業を考えたとき、社会保険が全額自己負担になることを
躊躇されるケースが多いと思いますが、決して「会社が負担してく
れているわけではない」と、発想を切り替えることが重要です。

●独立すると、努力すれば収入は青天井で増えていく可能性もあり
ますし、いくら努力しても借金を抱えて自己破産するかもしれません。
良いも悪いも全て自己責任です。

●経済的にも精神的にも自立しないといけないのですから、社会保
険の会社負担がなくなることくらい、当然のこととして腹をくくりまし
ょう。

第3回 法人を設立するか、個人事業でスタートするか

●独立開業する場合、法人(会社)を設立する場合と、個人事業で始
める場合と、2つの方法があります。

●どちらの方法を選択するかによって、独立開業後に加入すること
になる社会保険も全く変わってきます。では、法人か個人事業か、
について考えてみたいと思います。

●まず、法人といっても、メジャーな株式会社から、合資会社、N
PO法人、最近では士業の法人など、さまざまな種類がありますが、
ここではメジャーな株式会社を想定してお話を進めます。

●法人化するメリットは、おおざっぱにいうと、信用力がつきやす
いことと、所得が多い場合は節税になる、という2点でしょう。

●でも、法人化するにはデメリットもあります。具体的には、
・設立費用が高額である(株式会社で最低でも25万円程度)。
・赤字でも毎年7万円程度の法人住民税を納める必要がある。
・会社を解散する場合も、かなりの面倒な手続きを要する。
・税理士などにも関与してもらう必要がある。
などです。

●これは、俗にいう「1円会社」でも同じで、あくまで資本金が1円
でもいいというだけで、設立費用や維持費、手間などは、基本的に
は資本金1000万円の会社とほぼ同じです。

●で、法人と個人事業、どちらからスタートするのがよいかですが、
特にこだわりがないのであれば、とりあえずは個人事業でスタート
したほうがよいと思います。

●スタート時は収入も少ないでしょうから、節税のメリットが出る
ケースも少ないでしょうし、管理業務もかなり増えてきますし、赤
字でも法人住民税を払わなければいけないからです。

●また、「法人」という新たな人格を誕生させることになりますので、
簡単に「死なせる」こともできません。つまり事業がうまくいかなかっ
たとしても、会社を解散させるのに、煩雑な手続きが必要になって
きます。

●それに「信用力」は、あくまでも個人事業よりもつきやすいだけで、
大企業でもないがぎり、法人だからといってそうそう信用してもら
えません。信用してもらえるまでには時間と努力が必要になります。

●逆に、個人事業あっても、情報発信を続けてブランド力をつけて
しまえば信用してもらえます。

●ですので、とりあえず個人事業でスタートし、事業が軌道に乗っ
て、収入も大きくなった時点で法人化を検討すればいいと思います。
法人でないと取引しないとか言われれば別ですが…。

●個人事業から法人化はいつでもできますが、その逆は後退するイ
メージをもたれますし手続きも結構大変です。

●個人事業であれば、税務署に開業届を出すだけで簡単に始められ
ますし、青色申告にすれば(これも申請書を出すだけ)、税法上の
メリットもいろいろついてきます。

●事業の形態よりも、お客さんをいかに獲得するかとか、商品をい
かに魅力的にするかとかに時間を掛けるべきでしょう。

第4回 法人経営者と個人事業主の加入する社会保険の違い

●前回、独立開業する場合は、とりあえずは個人事業でスタートし
ましょうというお話をいたしました。

●独立開業する場合、株式会社や合同会社などの法人にするか、
個人事業者として開業するかによって、加入することになる社会保
険はかなり異なってきます。

●今回は、法人の場合と個人事業の場合で、独立後加入する社会保
険がどう変わるのか、比べてみることにしましょう。

●まず、法人として独立した場合ですが、経営者が加入する社会保
険は次のようになります。
                 サラリーマン → 法人の経営者

老後の生活資金        厚生年金  →  厚生年金

病気の医療費など       健康保険  →  健康保険

業務上の事故の医療費など 労災保険  →  基本的になし
                      (特別加入制度あり) 

失業したときの生活資金    雇用保険  →  なし

老後の介護費用         介護保険  →  介護保険

●このように、法人の経営者は、厚生年金や健康保険に加入すると
いう点では、基本的に今のサラリーマン時代と同じです。

●保険料の半額会社負担は、あなた自身が負担することになります
が、以前ご説明したとおり、実質的にはサラリーマンでも、自分自
身がすべて支払っているようなものですから、必要以上に気にして
はいけません。

●サラリーマン時代と大きく違うのは、労災保険と雇用保険がない
ことです。ただし、労災保険は、中小企業の経営者であれば、「特別
加入」という任意の加入制度があります。

●次に、個人事業として独立した場合ですが、基本的には次のよう
になります(例外も選択できますが、これは後日、改めてご説明い
たします)。
                 サラリーマン → 個人事業者

老後の生活資金        厚生年金  →  国民年金

病気の医療費など       健康保険  →  国民健康保険

業務上の事故の医療費など 労災保険  →  国民健康保険

失業したときの生活資金    雇用保険  →  なし

老後の介護費用        介護保険  →  介護保険


●で、給付(年金額や補償の範囲など)は、個人事業者になると、
だいたいサラリーマン時代より不利になります。

●ですので、生活リスクが、サラリーマン時代より大きくならない
よう、公的制度や民間の保険を含め、いろいろな方法でカバーして
いく必要が出てきます。

●次回以降、それぞれの保険について、具体的にどう変わるのか見
ていくことにしましょう。

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